Hello, World!

「ゆっくり底を探れるハードルアー」を作る 第4回 動くのか?

ブレードベイトはボディを背負っても動くか

微妙なバランスで成立しているものに別のものをくっつけて泳ぐのか?
まずはそこからです。
底で直立して云々は後の話。

で、前作ワイヤーベイトのバイブレーションブレードにねんどをくっつけて水槽で泳がせてみますが・・
泳ぎません・・

(写真2023.1.16)


「知ってましたけど?」

前に読んでものすごく記憶に残っていた漫画「聲の形」で、主人公の親友「永束くん」が負け惜しみで言った言葉が口をついて出ました。

今見ると、シリコンねんどが永束くんの頭に見えなくもない・・。

出典:聲の形 大今良時著

ねんど、重いしね。
ボディは底で立つように浮力ある材料になるわけだから、軽い材料で試そう。
ポリスチレンフォームを用意しました。建築用の断熱材としてよく使われるやつです。
もちろんこれをルアーの材料として使うわけではありません。柔らかすぎるので。あと比重軽すぎるから後に大きさも調整しなきゃいけないけど、柔らかいからどんどん削って試せます。実験用です。

単純な形(丸とか四角とか、円柱とか立方体とか・・)から始めるつもりでいたが、一番初めにつけてみたのはなんとなくブレードの形(平行四辺形)に近い形に削ったもの。
ボロボロだけど。いいんだ。誰に見せるわけじゃないし。と思ってましたが、お見せしてます。

水槽に入れてみます。

浮いたぞ。
底用なのに。

軽いなあ。ポリスチレンフォーム。

ゆっくり引く。
ブルブルとはいかないが、ヒラヒラと一応泳いでいる・・。弱いけどバイブレーション的な動き。
単純な形でなく、なんとなく「動くんじゃないか」的な形にしてしまったからか、泳ぐことは泳ぐ。でも・・。

少し速めに引くと、ボディは斜めになる。

ブレードに比べて水の抵抗をより受けるボディの方が後方に残るのでそうなるのは予想していました。

「知ってましたけど?」と
また永束君を思い出しつぶやきます。

斜めになった状態でヒラヒラとした動きはある。
あるけどそれは、削って付けたボディの先端部分がリップのような役目をして動いているような感じ。そしてそれは意図したことと違う方向です。ブレード(メタルバイブレーション)部分のバイブレーションの働きで全体を動かすのがこのルアーだから。
頭を下にして垂直に近い姿勢で引かれることでブルブル・ヒラヒラ・パタパタというような動きになるわけで・・

あと、斜めの姿勢の良くなかったのは、速く引くとよりはっきりするけど、引くと潜ること。

ボディが受ける抵抗で姿勢が斜めになる→その斜めの背が受ける水の抵抗でルアーが下に押される→潜る

底用だから潜る方向がいい、ってわけじゃなくて、これも目指しているのとは違う動きだから。
どちらかというと引いた瞬間にちょっと浮く(上昇する)ようにしたい。
そういうところがワームのテキサスリグやジグヘッドとの違いを生める部分だから。
よく「底をポンポンと引いてきて」っていう時に頭に浮かべる図みたいに、ちょい浮いて沈んで、っていうのを繰り返せるイメージ。
そういうバランスにしたい。

単体でちょうどよく成り立っているアイ位置のブレードに別の物体をくっつけてるから斜めになるわけで、もっと後方に支点=アイ(穴)を持って来ないとだめなのはわかっていたけど、でもこの短いボディでもこんなに斜めになるのか・・。
これがボディの長いミノー的なものになればもっともっと抵抗受けますね。
長さ分抵抗を受けるからだいぶ後方に支点が来てしまうなあ。

でもアイが極端に後ろに来て、例えばボディの背中にアイがあるような形だと、仕組みとしてバイブレーションプラグ(リップレスクランク)と同じことになる。
それだと薄さで動きを生む「メタルバイブレーションのリップ」の効果が半減してしまう・・。

この時点で「ああしなきゃだめかな」「こうすればどうだろう」と考えますが、「とりあえず削った形」であれこれ考えるのはやめます。

あらためて単純な形から始める

改めて、本来最初にやるべきだと思っていた「単純な形から始める」をやることにします。
単純な形から始めて、少しづつ形を変えていくと動きがどう変化するのかを把握したい。

さっきと同じポリスチレンフォームを円筒形に削りました。
新しいルアーの「リップ」となる前作のブレードに取り付けます。というか貼りつけて、水槽に入れます。

今度は沈み、底で直立しています。
これだよ!
形は関係なく、単に先程との大きさの違い=浮力の違いからです。たまたまそうなっているですが、でも作ろうとしているものの基本の姿勢がこれ。
着水して沈んでいって底に到達すると倒れずに直立している、状態です。

ブレードには二つのウエイトがついています。先端と腹(?)部分。
その先端の大きい方のウエイトからはみ出た平行四辺形の鋭角部分で底に立ってます。
前回(第3回は→こちら)書いた「前作を作った時に、この形のこの部分は別のルアーに使うときに使える武器になると思った」というのがこの先端部分です。
武器となり得る利点が二つあります。

そのうちの一つが、止まった時に「点」で立つので微妙に揺れていること。
その方が魚を誘うと考えるからです。

もう一つは、この鋭角部分が「ルアーがすべらずに引っ掛かるためのトゲまたはツメ」となることです。
直立して底を切った位置にボディがある、それだけじゃなく、岩とか倒木の上でも立たせたい。
鳥が枝に止まるように、です。

これについてはまた先の回で紹介します。

引くと斜めは変わらず。
ちょい揺れるだけの動き。


ここから幅(厚み)を削っていくことをやります。

・薄い金属のブレードだけで動きは成り立っている
・そこに余計なものがくっついているから動かない
・余計なものをちょっとづつ小さくしていって
・元の薄い金属だけに近づいていけば動くだろう
ではどのくらい近づけば動くのか、それを知りたい。

(写真ここまで2023.1.17)

幅(厚さ)が1mmづつ狭くなるよう(片側0.5mmづつ)削っては泳がせて動きの変化を観ます。
せっかくなのでノートに書き留めます。

直径11.5mmだった円筒形を2mm削って幅9.5mmから動き始めました。
次に削ると細かい振動で「可」と言える動きになりました。

もともと薄いブレード単体で成立していたのだから、くっつけたものがどんどん薄くなるほど元の形に近づいていって動きが良くなるだろうという予想のもと、削っては泳がせます。

全体的にはその予想通りでしたが、薄くなっていく途中で動きが悪くなる幅(厚さ)があったのです。
一瞬頭が「?」となりました。

(つづく)