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「ゆっくり底を探れるハードルアー」を作る 第7回 材料と構造と形の間で行ったり来たり

実用的なルアーにしていく作業

形が確定したわけでもないですが、
この辺りから実用的なルアーにしていく作業をします。
・実用的な構造で
・実用的な材料
に近づけながら進めていきます。

ここまでは試しやすい材料=加工しやすい材料で簡単に試していっています。
・ボディはポリスチレンフォーム
・リップはプラ板の0.5mm
どちらもそのままルアーに使うには弱い材料です。
これを実用的にするために材料を変えると、厚さや比重が変わって、動きも変わってしまいます。
それを前の材料でできていた動きに戻す・近づけるのには形や大きさもまた作り直さないといけないので、そこは2度手間になります。

最初から本ちゃんで使う材料にすればその手間がいらないんだろう。
でも、それだと
「ささっと削って、あれこれ試す」
みたいな感じには進められない。
ひとつひとつを作って試すのに時間がかかります。

というか面倒だと、いろいろと試すこと自体しなくならない?
億劫になるというか。
それだと最初に「これだ」と形を決めてそれに沿って進めることになってしまうから、あれこれ自由に探りながら進んでいけない気がするんだよね・・。

だから、めんどくさがりな自分にとっては最初の部分を簡単な材料で試すのは合ってると思う。

なので材料を変えようとしているこの後もまだそれら材料を登場させてます。
なんなら材料を変えて動きが変わってしまった後に
「あの動きはよかったなあ」
と思い出し、ポリスチレンフォームと0.5mmのプラ板に戻って泳がせたりしています。(現実逃避)

「あの動きはよかった」やつ。

材料に何を使うかの、その前提ともなる「構造をどうするか」についてもまだほったらかしです。
釣り人と魚をつなぐ糸を結ぶアイからフックまでをどういう構造にするか、という部分です。
(そのフックをまだ付けてすらいない。)

形と構造と材料の間


このルアーでラインアイはボディに付けるのでなく、リップに開けた穴にスナップをつける形になります。

そのリップは薄くないとだめ。
リップがブレードベイト(メタルバイブレーション)の役割を果たすわけなので。

例えばプラスチックのディープダイビングミノーのリップだとリップにアイが埋め込まれて取り付けられているけど、このルアーのリップは薄いから、穴のアイにするのが合ってる。

ボディ材には浮力が必要。
「リップの先端にはしっかりした重さがあってちゃんと沈むけど、ボディが軽いから底で立つ。そしてその姿を『喰いやすい位置で』魚に見せる」というのがこのルアーの目指すところ。

そしてボディにもある程度薄さが求められるのがここまででわかってる。
円筒形じゃダメ。
なので、ボディ断面の形は楕円形もしくは円の両サイドを平らにしたような形になり、それでも浮力がある材料するのか、またはそういう構造(?)にする必要がある。

多くのプラスチックルアーみたいに、ボディが空洞でリップと一体のものはどうかというと、リップが厚くなるので、その点はこのルアーに合わない。


曲がったしっぽの先の細いところに独立したフックアイを埋め込んで取付けるのは難しく、また強度的にも不安。

普通のルアーであればラインアイ・フックアイ共にワイヤーなら独立じゃなくつなげて貫通させることもできます。よくバルサ製ボディのミノーなどの内部構造として紹介されているやり方です。


このルアーでもワイヤー貫通させることも考えられたけど、カーブしたボディに合わせてカーブしたワイヤーを貫通させても、引っ張られたときに伸びてしまうその形ではボディが壊れてしまう。

リップとボディはリップの厚さが薄い方がいいので別の材料となるだろう。

そこで考えた構造は、リップをしっぽの先まで貫通させることです。
ブレードベイト(メタルバイブレーション)が細長く、ボディに合わせてカーブした形でボディの中に隠れていて、しっぽの先のアイにつながっている、という感じ。
「平べったい骨」の感じです。

ラインアイはその板に穴を開けて作るし、フックアイにつながる1枚の板なので引っ張りに耐えられるだろうし、それがいいんじゃないかと。
ただ、板の貫通の分の重さはあるけれども。

リップ材は金属かサーキットボードかのどちらかでと考えた。
強度的には金属の方が安心できるし、サーキットボードだと付けるアイの穴のハトメも要らない。でも金属の重量はいらない。
このルアーが沈むために必要な重量はできるだけ先端のウエイトに集中してほしく、その他は極力軽くしたい。
ここはサーキットボードを試してみよう。
Amazonで1mm厚のサーキットボードをポチります。

ボディ材料は発泡ウレタンで考えました。
発泡ウレタンは比重を軽くするために発泡倍率を上げることもできる。
上げるとその分強度が弱くなるけど、1枚の板を頭から尾まで貫通させるのであればそれが骨組みとなるし、引っ張りの力に対しては板が担当するので、発泡ウレタンはいいのじゃないか。

カーブしたボディの中に直線を通したい・・

考えないといけないのは板状のものであってもカーブした形状の場合、引っ張られれば板が伸びようとして歪んだり捻れたりすること。
板の面積が広い形ならばそんなに気にしなくてもいいのかもしれないけれど、ミノー的な幅が細く面積が狭い形だと、カーブした形が引っ張られると歪むだろう。

または板の厚さでもカバーできるかもしれないけど、重さ的にもリップ部分の厚さとしても、薄い方がいい。
そこで考えられるのは・・

板が形状的にカーブしていても、ラインアイとフックアイを結ぶ直線がその板の形状の中に収まっていれば捻れや変形は少ないだろう、ということ。
カーブの内側ギリギリか、それが無理だとしても内側に近い位置に直線が通る形。

上はだいぶ雑ではありますが・・
カーブしたボディの中に、ラインアイから後ろのフックアイまで直線が入る形の板を通そうとするとカーブの内側にはみ出すよね、という見本です。
前回動きが「ふにゃふにゃして見えた」という1個よりはカーブをだいぶゆるくしているんだけれども、です。

材料を変える

試行錯誤は続くけど、ここからは試すのにも実用的な材料を使い始めました。
これまでサイズ的に小さなボディで試してきましたが、ボディのサイズも本来作ろうと思っている大きさにします。

まずは削ってみようと、成形された発泡ウレタンを手で削り始めました。
型に入れて発泡させる液体の材料でなく固形です。

使用したのはルアーやウキの材料用に販売されているもので、カッターで削れるものの、充分な硬さがある、それなのに比重が軽いというすぐれもの。※1

リップ厚さも今までの0.5mmから1.0mmにします。まずはプラ板で。


形を踏襲したままサイズアップしたものを泳がせてみる。
ここでちょっと落ち込んだ。
1からやり直しぐらい違う・・。動きが。
でもそりゃそうだよね。
大きさ・厚さ・材料が変わるから動きも変わる。

ここまでは簡単に形を作れる材料で「どういう方向なら成り立つのか」を簡単に試していたわけで。

頭の中で考えているだけじゃまとまらないから紙に書いたりする→形にしてみたくて粘土をこねたりする→でも粘土じゃ泳がせられないから簡単に削れるポリスチレンフォーム削って試してみた
という段階で「おもしろい動きだ」とかよろこんでても、実用的なものにするのはまた別のこと。


わかってました。
いや、嘘じゃなく・・。


(つづく)

出典:聲の形 大今良時著

※1 ルアー(餌木)メーカー「キーストン」社製、商品名「ミケラン次郎」。
手で削ってルアーなどを作る材料として販売されているものです。
本サイトでは機械で削ったものも出てきますが、普通にカッターで削ってサンドペーパーで仕上げて作れます。
硬度があるのに比重が小さい=浮力がある。軽いのに硬さがあるのが素晴らしい。
この材料の材料(液体、混合するものなど)が販売されたらいいなと思うけど、それは無理なのかなあ。

(後にボディを成形する際に、液体の発泡ウレタンを型に流し込んで製作することになりますが、もちろんその材料とは異なります。)

(文中写真ここまで 2023.1.24〜2023.2.6)